PEM電解槽用イリジウム触媒

PEM水電解などによる水素製造への貴金属ソリューション

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PEM電解:電極触媒

水電解には、アルカリ電解や固体酸化物電解などの技術もありますが、現在、プロトン交換膜(PEM)電解に注目が集まっています。PEM電解は、水素経済への移行において重要な役割を果たすことになると期待されているのです。

PEM電解槽は、電圧変動応答が速いため、出力抑制された、過剰な再生エネルギーの貯蔵に対する非常に優れたソリューションです。また、高電流密度での運転が可能であり、アルカリ電解と比較して狭い場所でより多くの水素が製造できます。PEM電解槽は水素の高圧排出口を備えており、水素ステーションに直接設置することも可能です。

水のPEM電解によるグリーン水素の製造というコンセプトは、製造した再生可能エネルギーの貯蔵、輸送、配置に非常に適しています。世界の二酸化炭素排出量の削減に向け、グリーン水素の規模拡大とコスト削減は必要不可欠なステップです。

ヘレウスによるPEM電解槽触媒製品

ヘレウスは、160年以上にわたり貴金属事業に尽力してきました。貴金属触媒に関する高度な専門知識を駆使して、PEM電解槽触媒を提供しています。

ヘレウスは、さまざまな貴金属担持量の電解槽触媒製品を取り揃えています。

また、設備の整ったオンサイトラボラトリーやテストセンターでの試験を通じ、お客様のニーズに最適なソリューションを探ります。


触媒

イリジウム黒

二酸化イリジウム

次世代低イリジウム

イリジウム・ルテニウム混合酸化物

名称

H2EL-Ir

H2EL-IrO

H2EL-xxIrO-S

H2El-xxIrRuO

特長

高い金属純度

高表面積材料

低Ir含有量、サポート材料

低Ir含有量

主な性能

非常に活性が高く、安定している

非常に活性が高く、非常に安定している

優れた活性と材料効率

優れた活性と材料効率

BET表面積 [m2/g]

21 - 25

>180

20 – 150

120 – 200

質量活性 @ 1.45 Vcell (iRフリー)* [A/g]

~ 79

~ 86

~ 570 (30%)

~ 450 (H2EL-50IrRuO)
 オンラインで購入  オンラインで購入 オンラインで購入
 45% Ir
 35% Ir
 30% Ir
 10% Ir
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80°C、5cm² セル;陽極 0.3mg/cm²

イリジウムを市場のベンチマークと比較して50~90%節約

当社は、貴金属担持量を大幅に低減したPEM水電解槽触媒を開発することで、画期的なイノベーションを達成しました。

低担持量の触媒である H2-EL-xxIrO-S は、従来品と比較してCCM 中の貴金属担持量を 50-90% 削減しながら、最大 3 倍の触媒性能を提供します。

ヘレウスの最新のイノベーションは、PEM水電解用のルテニウムベースの触媒になります。ルテニウムはイリジウムと並び、PEM電解で不可欠である酸素発生反応(OER)を起こします。ルテニウムはイリジウムよりも優れた触媒活性を有しますが、PEM電解槽スタックの厳しい条件下においては安定性に欠けます。

ヘレウスのコンセプトは、ルテニウムと酸化イリジウムを新しい方法で組み合わせることによってこの問題を解決し、ルテニウムによる触媒活性の向上を維持しながら安定性を高めています。

このルテニウム-イリジウム酸化物は、前例のない活性の向上を実現します。この触媒は、酸化イリジウムの最大50倍の質量活性を達成することができ、酸化ルテニウムの単独での使用とは異なり、運転条件下でも安定性を維持します。加速劣化試験においては、30,000サイクル後の安定性が確認され、活性低下は酸化ルテニウムよりも著しく低く、酸化イリジウムと同等であることが確認されました。

低担持量のイリジウム電解槽触媒の導入は、水素の増産にとって重要な要素となります。

Maximum New Electrolyzer Capacity
イリジウムのスリフティングは、水素ランプアップ中の潜在的な材料ボトルネックを回避するための重要な要素であり、材料コストに大きな影響を与える。

イリジウムは希少金属であり、一次原料の採掘は白金の採掘に依存しています。イリジウムは年間約9トンしか採掘されず、その量はすでに既存の用途で使用されています。他の産業においても代替品を使用し、リサイクルにおいてもさらなる材料流通に取り組むことで、約1.5トンを水素社会に取り込むことができると仮定しますと、2023年から2030年にかけて合計で約12トンのイリジウムが利用できる可能性があります。

一方、2030年までの電解槽の容量は世界全体で175GWと発表されています。この容量の40%はPEM型で建設されると予想されており、これは70GWのPEM電解槽容量を意味します。

現在の触媒担持量を平均400kg/GWとすると、2030年まで28トンのイリジウムが必要となりますが、ヘレウスの次世代低イリジウム触媒(Möckl et al. JECS 2022)で示されている100kg/GWの低担持量では、必要なイリジウムはわずか7トンであり、これは十分に手の届く範囲になります。

電極触媒のエキスパート

Steffen Kitzing
Sales

Steffen Kitzing

Hydrogen Systems, Recycling

バイポーラープレート用白金前駆体

電解槽は、スタックを形成する50~150個の電解セルなどで構成されています。スタックのセルとセルの間でバイポーラープレートが個々のセルを仕切り、水と生成ガスを膜に送ったり膜から放出したりします。また、バイポーラープレートは導電を行い、システムの冷却を助けます。

バイポーラープレートの材料にはいくつかの種類があります。金属材料を使う場合は、腐食を防ぐためにバイポーラープレートを白金などの貴金属でコーティングする必要があります。セルは高電圧であり、コーティングをしないと酸化につながる望ましくない電気化学プロセスが始まり、バイポーラープレートが劣化するためです。コーティングは材料の品質劣化を防ぎ、耐用期間を伸ばし、性能を高めます。

白金DNS(ジニトロスルファト白金)を利用することにより、電気めっきプロセスでバイポーラープレートを薄い白金層でコーティングできます。ヘレウスは、お客様のニーズに合わせて確かな品質の白金DNSをお届けします。詳細はお問い合わせください。

白金コーティングは電解槽スタックの耐用期間を延ばすことができますが、それでも耐用期間はいつか終わりを迎えます。CCMからの貴金属の抽出が可能な、ヘレウスのクラス最高のPEMセルリサイクルサービスを活用すれば、資源を循環させることができます。

バイポーラープレート用前駆体のエキスパート

Sales

Dr. Detlef Gaiser

Customer Contact Chemical Products

アルカリ水電解(AWE)

現在製造されている水素は、その大部分がアルカリ水電解(AWE)により生成されています。この技術は何十年も前から存在していますが、通常は貴金属ベースで行われていません。多くの場合において、AWEは、過去も現在も第一の選択肢です。しかし一方で、特にグリーンエネルギーのように電気入力の変動が大きいものについては、PEM電解が優位な場合も見られます。

既に述べた通り、通常AWEに貴金属は使われません。しかし、ジルコニアやニッケルを含む一部の材料の供給が不安定であるため、白金族金属を含む代替材料の使用が検討されています。

AWE電解用の貴金属の可能性については、ヘレウスのエキスパートにお問い合わせください。

アルカリ水電解のエキスパート

Sales

Dr. Detlef Gaiser

Customer Contact Chemical Products

高温電解(SOEC)

固体酸化物電解(SOE)では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)はリバースモードで作動します。燃料電池を使って水素から電気を発生させるのではなく、電圧をかけて水蒸気を水素と酸素に分解します。そのため、実際のセルは、水素を発生させるだけでなく、その水素を後で電気回収に利用するという2つの目的に使用することができます。

通常、固体酸化物電解槽セル(SOEC)あるいはSOFC自体に貴金属を使用することはありません。しかし、必要とされる高い動作温度がすでに得られているため、廃熱が生じる工業プロセスに関連して使用されることがあります。このようなプロセスでは、貴金属を含む部品が様々な場面で利用されています。

ヘレウスは、燃料処理のために、改質、水ガスシフト、または優先酸化(PROX)や選択的メタン化などのガス精製用の触媒ソリューションを提供しています。詳しくは  ガス精製のページ または、私たちのソリューションについて  燃料電池の運転 その他のHeraPur®精製技術については、こちらをご覧ください。

他の手法による電解と同様に、SOEでも不要な成分から水素を簡単に精製することができます。詳細は水素精製のページでご確認いただけます。  水素精製 .

高温電解のエキスパート(SOEC)

Sales

Dr. Hendrik Spod

Chemical Catalysts, Emission Catalysts

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